アレクサンダー探訪(5) FMの脚本

1904年にロンドンに渡ったFMアレクサンダーは、俳優をやめても演劇界にかかわりを持ち続けました。ロンドンでのエピソードの中でも、特に知られていないことがあります。最初に発見したのはジェローン=スターリン博士でした。博士の発見によると、FMはガールフレンドのエブリン=グローバーと「the Question of the Time (時間の問題)」という脚本を作りました。
この脚本はランカシャーのある家族が題材となっています。登場人物は4人、ランカシャーの農夫である父親、その妻、その娘、娘の恋人。夜の11時、娘が自分の部屋にある暖炉のそばで椅子に座って寝ているところから始まります。そこに彼氏が窓から現れ逢引しているところに父親が登場し彼氏は大きな古い時計に隠れる、父と娘の押し問答で最後には時計が倒れ、母親の呼ぶところへ父と娘は退場します。最後に娘が振り返ると、彼氏は無事に時計から出てきてハッピーエンド、といった短い喜劇になっています。
博士は一度も公演されることはなかったと言っていましたが、1908年当時の新聞から三つの記事を発見しました。記事から推測すると、公演されたのは1908年10月26日、有名俳優が出演する演劇の前座みたいなもので、観客の記憶には残らなかったようです。
FMの生徒に俳優がいたことはもちろん、後の教師養成コースで演劇をしたようにFMは演劇から離れることできなかったようです。脚本の草稿は大英図書館で眠っています。