Constructive Conscious Control of the Individual

1923年初版、"Constructive Conscious Control of the Individual"はFM=アレクサンダーの第二作目。『人類の最高遺産』の第二巻にあたり、彼にとって一番のお気に入りです。四作の内『自己の使い方』と本書は人気が高く、『人類の最高遺産』と比較すると読みやすい作品になっています。

本書には、タイトルを決める際に次のようなエピソードがあったようです。

……思い出していくと様々な人達がいました、デューイ博士を含め唱えられた異議は、題名「Constructive Conscious Control of the Individual」の長さに対するもので、提案はこの言葉「of the Individual」を省略しようというものです。FM氏はこう言いました、「ダメだ。その言葉が最も重要な題名の部分なのだ。時代が到来し、個人(individual)はますます重要性をなくしていくと考えられる。国家、すなわち共同体がすべてになるだろう。我らが関心を持つのは、」と氏は続けて「個人の質であり、個人とは共同体を形成するものなのだ。」と。……

Irene Tasker, Connecting Links (The Sheildrake Press, 1978 ), p.15

アレクサンダーにとって、「Individual(個人)」がいかに大事だったのか。デューイはタイトルを短くしようと考えましたが、結局できなかったようです(Tasker, 1978, p.5)。デューイが1925年に出版した『経験と自然』にアレクサンダーを参照する箇所があります。そこでは、「See F. Matthias Alexander's Man's Supreme Inheritance, and Conscious Constructive Control.(Nature and Experience, George Allen And Unwin, Limited, 1929年版, p.296)」となっており、「of the Individual」が抜けているどころか、著作名自体がデタラメになっています。その後、ある時点で修正されたようで、著作名は"Constructive Conscious Control of the Individual"になっていました。この時期に彼らの交流は特に深くされており、デューイの作品にも影響が現れています。

本書は様々な観点から「感覚的評価(sensory appriciation)」について考察されており、生徒・練習生・教師といったアレクサンダーテクニーク(AT)を学ぶ人なら誰でも役に立つ一冊です。第二部 第四章の「実例」では用語の説明と「手を椅子の背もたれに置く(hands on back of the chair)」が載っています。これはATで用いられる手順の一つで、2004年版に与えられた序文でカーリントンが「……アレクサンダーによると、生徒に手を置くこと、と同様のやり方で、手を椅子の背もたれに置くこと、が出来るようです」と言っているように、教師にとっては非常に重要です。この手順が最初に紹介されたのは、1910年発表の"Supplement to Re-Education of the Kinaesthetic Systems Concerned with the Development of Robust Physical Well-being"の中です。そこからいくらか詳細になり、修正と変更がなされています。

本書は『人類の最高遺産』と比較すると読みやすく、時代背景の古くささもあまり感じません。特に教育の話題に関しては現代日本に通ずる部分もあり、全編を通して登場する「感覚的評価」をどのように扱うのかが鍵になります。ワークを進めるにあたり、この「感覚的評価」をあてにドツボに嵌まっている人がいるとしたら、本書を読むことでヒントがあるかもしれません。しかし、アレクサンダーは『人類の最高遺産』の第二巻と位置づけているため、『人類の最高遺産』と本書の両方を読むとより理解が深まるかもしれません。

現在入手可能なものは、Mouritz出版のCream版とWhite版があります。まずCream版には1923年版と1946年版を比較した書籍の変遷や書評などの付録とインデックスがあります。White版には付録もインデックスもなく1946年版のアレクサンダーが最後に手を加えたものに近い状態で出版されており、Cream版よりも安価になっています。これらはMouritz(ネットショップ)から購入可能です。日本語版は現在、ATJ翻訳チームにより翻訳中となっており、2017年には出版予定です。

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