ワーク
・・・私の主目的はすなわち、人類の知的な能力を拡大することであり、そうして我らは意識的な調整(conscious control)をする方向へ成長する。
現在はアレクサンダーテクニーク1と総称されていますが、創始者は意識調整(Conscious Control)と呼んでいました。意識調整は、オーストラリア出身の俳優FMアレクサンダー氏が発見した意識を用いて自己調整する手法です。日常生活にある心身の習慣に気づき、それを見直します。問題の原因を探り、原因を少しずつ減らすやり方を学べます。その原理に基づいた心身の自己再教育で「自己の使い方」を学びます。
意識調整
才能や環境は個人の力で変えがたいものです。しかし自己の「使い方」は、意識を用いて自己改善できます。使い方はこれまでの積み重ねた行為の結果です。
使い方を変えるためには、第一に自分自身のしている不必要な習慣を認めることです。無意識のうちに繰り返された使い方は、身体的な行為だけではなく、考え方・嗜好・階層・社会・職業・性別・人格など、心身全般に現れます。習慣的な行為に気づくためには、今までのやり方と新しいやり方を比較実験しながら教師と一緒に調べていきます。
もちろんアレクサンダーテクニーク(AT)で言われる頭と首と背中の関係性も大事です。しかし、そんな関係性を生じさせるそもそもの原因を探り、予防することが重要事項です。そのためには、これまでの暮らし方や考え方を変えざるを得ません。
自己改善するには
原因がわかれば、不必要な習慣的を抑制する(inhibition・non doing・するのをしない)練習になります。習慣は刺激に反応して即座に現れます。抑制するには習慣が起こるずっと前から、そのような反応を意識的に予防します。レッスンの初期は、教師の手助けにより習慣に気づき、やめていく段階です。訓練が進んでいきますと、原因となる習慣的な行為が起こる前に抑制や予防し、新しいやり方で順番に計画を組み立て実行します。
実際に問題解決へ向かうには、自己を使うところで予防的に今までのやり方を抑制し、抑制を継続しながら新しい方向へ進みます。それを一つ、二つ、三つ・・・と段階を踏んで指示を継続しながら組み立てます。そうやって訓練していきますと、自分自身が自分の教師となって手段を吟味しながら暮らしていけるようになります。
原因がなくなれば問題(結果)もなくなります。そうなると心身の調整能力も取り戻せます。まずはお試しレッスンから新しいやり方で心身が統合する方法を学んでみませんか。
自己改善で邪魔になるもの
自己改善の大敵は「感じ」(感覚的評価)に頼ることです。また、ワークに対する評価を「楽な感じ」や「自然な感じ」、「不自然な感じ」や「不快な感じ」で即座に判断するのも邪魔になります。「感じ」はある状態から別の状態へ変わったことを知覚したものです。それには個人差があります。頑張りすぎていた人にとっては「楽になった」と感じるかもしれませんし、怠けていた人にとっては「頑張っている」と感じるでしょう。そうなりますと、習慣を長年やっていれば、それがたとえ機構的に不利な使い方となっていても「自然に」感じませんか。
考え方が異なります。話を聞くだけではわかりにくい・理解できない「気分」になります。本を読むだけでも同様です。これまで積み重ねてきた他のワークや知識や経験が役に立たないばかりか、邪魔をしてしまう場合もあります。まずは実体験してみてはいかがでしょうか。
教科書
学ぶための教科書2やその他に豊富な資料を用意しています。レッスンはアレクサンダーの著作を基礎に置いています。ワークの学習者は必読です。
- 『人類の最高遺産(Man's Supreme Inheritance)』
- 『建設的に意識調整するヒト(Constructive Conscious Control of the Individual)』
- 『自己の使い方(The Use of the Self)』
- 『いつでも穏やかに暮らすには(The Universal Constant in Living)』
紙版やその他ATJの本は、オンラインショップと教室で購入可能です。
当教室でレッスンする教師は、ATJ翻訳チームに参加し、日本語版製作に関わりました。質問があれば実践を含めてお伝えできます。また、継続的にアレクサンダーとワークの歴史や手法を研究しています。意識調整は問題解決に向けて心身の諸問題に対応できます。
FMアレクサンダーとは
FMアレクサンダーは俳優として致命的な失声から復帰し、公演を続けながらも徐々に俳優業から教育業に移行しました。オーストラリア時代(1894年~1904年)は主に呼吸法と演劇法を教えました。主な生徒には俳優仲間や医師、医師から紹介された患者がいました。1904年に渡英後、熱心な医師の支持者が見つかり、同時に演劇界でも注目を浴びるようになります。世界大戦中はアメリカに避難し、アメリカでも生徒と支持者を増やしていきました。3イギリスの医師やアメリカのアカデミックな現場で働く支持者らは評論や論文を発表し、公に紹介しました。
FMアレクサンダーについて、著者から許可を得て生涯とワークを研究した論文の概要を翻訳しました。
日本で発展するワーク
私達は能楽を初めて味わいました。・・・言葉にしにくいことですが、根源的な魅力は完璧なテクニークを考えずにして語れません。意識調整は確かに日本で生まれ育まれました。
このワークの支持者の代表格である哲学者のジョン=デューイは、日本人の所作にアレクサンダーのワーク「意識調整」の原理を観ました。私達の生活に取り戻してみませんか。「意識調整」に言及したデューイの手紙は他にもあります。
デューイの記述
次のドキュメントには、アレクサンダーに関するデューイの記述があります。その記述を読めば、彼が熱心な支持者だったとわかります。彼はアレクサンダーの3作品4に紹介文も寄せました。